霞ケ浦の水ぬるみ、柳青める候になると、春の使者、ツバメが渡来します。今年(平成 二年、一九九〇)は、三月二十六日に土浦市内を飛ぶ姿が見られました。環境庁と山階鳥 類研究所が実施している標識調査によって、日本で繁殖するツバメは、台湾やフィリピ で越冬することが知られていました。ところが昨年、山口県で足環をつけられたツバメが ベトナムで捕えられ、インドシナ半島まで渡ることが初めて確認されました。
ツバメは田園の鳥ですが、街の鳥でもあります。阿見町君島のある旧家では軒下にツバメの通路用の穴を開け、土間の梁に巣をつくらせ、毎年家族で見守っています。土浦市内では、商店街のアーケードに多数のツバメのつがいが営巣し、やはり市民に見守られながら子育てします。
両者に共通するのは、水辺が近いことです。ツバメは、水辺に発生する昆虫、特にユスリカ類を大量に食べます。霞ケ浦の水ぬるむころには、ユスリカの羽化が始まり、この時期に一致してツバメが渡来することは、自然の理とは言え、巧妙にできているものです。
ところが、近年の暖冬傾向を反映して、霞ケ浦でも越冬ツバメが目につくようになりま した。筆者は、平成二年三月九日に玉造町舟津で、湖上を飛ぶ数羽のツバメを観察しました。この時点でのツバメの渡来前線は九州まででしたので、霞ケ浦のツバメは越冬個体と思われます。暖冬傾向が続けば、ユスリカは冬も羽化しますから、霞ケ浦は越冬地として定着するかもしれません。
再開発されてアーケードが無くなった土浦駅前通り、ツバメは何処に?2021