初夏に、アシ原が残っている霞ヶ浦湖岸を歩くと「ギョギョシ、ギョギョシ」とけたたましい声が聞こえてきます。声の主は何処とアシ原を一望すると、アシの茎の先で、スズメよりやや大きく、地味な体色の野鳥が、声を張り上げている姿が目に入ります。それは、オオヨシキリのオスで、東南アジア方面から渡ってきた夏鳥です。
霞ヶ浦では、この鳥の一番早い個体は四月二十五日前後に渡ってきます。メスよりオスの方が早く渡ってきて、自分のナワ張りを宣言しメスを招きます。メスはアシの茎に、枯れアシの葉などを材料に、お椀形の巣を作り産卵します。
この鳥は一夫多妻で、抱卵と育雛はもっぱらメスの仕事です。オスはさえずるだけで楽をしているように見えますが、ナワ張りを守るため昼夜の区別なく鳴き通し、他の侵入オスを追い払いますから、やはり相当の重労働のようです。
最近の研究では、オオヨシキリたちはコロニーで繁殖していることがわかってきました。これは、抱卵鳥のカッコウや外敵に対して共同で防衛するためと考えられています。
このことは、オオヨシキリ個体群を維持するには広いアシ原が必要であることを示しています。つまり、この鳥を守ることは、自然浄化力の高いアシ原を、ひいては霞ヶ浦の湖水を守ることになります。霞ヶ浦浄化のシンボルとして、オオヨシキリを大切にしたいものです。
稲敷市、江戸崎地先にある小野川沿いのオオヨシキリの飛来地。