もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌

2・古代の霞ケ浦

3・霞ヶ浦の民俗・信仰

4・霞ヶ浦と洪水

5・霞ケ浦の水運

6、霞ケ浦の水生植物
第二十二話
浮葉植物の大敵・アオコ
第二十三話
アシ原の復活を考えよう

7、霞ケ浦の野鳥
第二十四話
浄化のシンボル・オオヨシキリ
第二十五話
野鳥の宝庫・浮島湿原

8、霞ケ浦の魚・貝類

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

11、霞ケ浦の富栄養化

12、霞ケ浦の化学物質汚染

13、霞ケ浦と農業

14、地球環境と霞ケ浦

15、常陸川水門
16、霞ケ浦の水利用
17、流域開発と環境容量
18、霞ケ浦と文学・映画
19、霞ケ浦の市民運動

第二十四話   浄化のシンボル・オオヨシキリ

 初夏に、アシ原が残っている霞ヶ浦湖岸を歩くと「ギョギョシ、ギョギョシ」とけたたましい声が聞こえてきます。声の主は何処とアシ原を一望すると、アシの茎の先で、スズメよりやや大きく、地味な体色の野鳥が、声を張り上げている姿が目に入ります。それは、オオヨシキリのオスで、東南アジア方面から渡ってきた夏鳥です。

 霞ヶ浦では、この鳥の一番早い個体は四月二十五日前後に渡ってきます。メスよりオスの方が早く渡ってきて、自分のナワ張りを宣言しメスを招きます。メスはアシの茎に、枯れアシの葉などを材料に、お椀形の巣を作り産卵します。

 この鳥は一夫多妻で、抱卵と育雛はもっぱらメスの仕事です。オスはさえずるだけで楽をしているように見えますが、ナワ張りを守るため昼夜の区別なく鳴き通し、他の侵入オスを追い払いますから、やはり相当の重労働のようです。

 最近の研究では、オオヨシキリたちはコロニーで繁殖していることがわかってきました。これは、抱卵鳥のカッコウや外敵に対して共同で防衛するためと考えられています。

 このことは、オオヨシキリ個体群を維持するには広いアシ原が必要であることを示しています。つまり、この鳥を守ることは、自然浄化力の高いアシ原を、ひいては霞ヶ浦の湖水を守ることになります。霞ヶ浦浄化のシンボルとして、オオヨシキリを大切にしたいものです。

  稲敷市、江戸崎地先にある小野川沿いのオオヨシキリの飛来地。