桜川村浮島湿原は、面積約六〇ヘクタールで、霞ケ浦で最も広大なアシ原が残り、野鳥の宝庫として知られています。冬には、チュウヒやハイイロチュウヒなどのワシタカ類が飛び、初夏にはオオヨシゴイやコジュリンが繁殖します。
特にコジュリン(ホオジロ科)は、かつて高原の鳥と思われていましたが、昭和四十一年にここで高密度に繁殖していることが、地元の観察家と信州大学の研究者らによって発見され、低地の繁殖地として注目されるようになりました。
低湿地では一般に、多種多様な生物が生活しており、非常に豊かな、価値の高い生態系を形づくっています。ここでは、栄養塩類や有機物が水によって運ばれて集積し、まず水生植物がこれを吸収して繁茂し、水を浄化します。次に、植物を食べたり住み家にする 魚、貝、甲殻類が、さらに小動物を餌にする鳥類や哺乳類が集まります。
一方、低湿地は人間活動の影響を受けやすく、水質悪化、汚染、埋め立ての脅威にさらされます。浮島湿原も周辺が埋め立てられ農地や宅地となり、道路や橋が建設され、乾燥地化しつつあります。
現在、浮島を中心とした霞ケ浦を、ラムサール条約(特に水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約)の指定地にする運動が起きています。日本では、釧路湿原、ウトナイ 湖、クッチャロ湖、伊豆沼の四カ所だけでしたが、平成三年(一九九一)に谷津干潟や琵琶湖など五カ所が追加されました。指定地の拡大がさらに望まれています。
新利根川河口にある独立行政法人・水資源機構の妙岐の鼻湿原、鳥類観察小屋