もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌

2・古代の霞ケ浦

3・霞ヶ浦の民俗・信仰

4・霞ヶ浦と洪水

5・霞ケ浦の水運

6・霞ケ浦の水生植物
第二十二話
浮葉植物の大敵・アオコ
第二十三話
アシ原の復活を考えよう

7・霞ケ浦の野鳥
第二十四話
浄化のシンボル・オオヨシキリ
第二十五話
野鳥の宝庫・浮島湿原
第二十六話
冬の風物詩・カモ

8、霞ケ浦の魚・貝類

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

11、霞ケ浦の富栄養化

12、霞ケ浦の化学物質汚染

13、霞ケ浦と農業

14、地球環境と霞ケ浦
15、常陸川水門
16、霞ケ浦の水利用
17、流域開発と環境容量
18、霞ケ浦と文学・映画
19、霞ケ浦の市民運動

第二十五話   野鳥の宝庫・浮島湿原

 桜川村浮島湿原は、面積約六〇ヘクタールで、霞ケ浦で最も広大なアシ原が残り、野鳥の宝庫として知られています。冬には、チュウヒやハイイロチュウヒなどのワシタカ類が飛び、初夏にはオオヨシゴイやコジュリンが繁殖します。

 特にコジュリン(ホオジロ科)は、かつて高原の鳥と思われていましたが、昭和四十一年にここで高密度に繁殖していることが、地元の観察家と信州大学の研究者らによって発見され、低地の繁殖地として注目されるようになりました。

 低湿地では一般に、多種多様な生物が生活しており、非常に豊かな、価値の高い生態系を形づくっています。ここでは、栄養塩類や有機物が水によって運ばれて集積し、まず水生植物がこれを吸収して繁茂し、水を浄化します。次に、植物を食べたり住み家にする 魚、貝、甲殻類が、さらに小動物を餌にする鳥類や哺乳類が集まります。

 一方、低湿地は人間活動の影響を受けやすく、水質悪化、汚染、埋め立ての脅威にさらされます。浮島湿原も周辺が埋め立てられ農地や宅地となり、道路や橋が建設され、乾燥地化しつつあります。

 現在、浮島を中心とした霞ケ浦を、ラムサール条約(特に水鳥の生息地として重要な湿地に関する条約)の指定地にする運動が起きています。日本では、釧路湿原、ウトナイ 湖、クッチャロ湖、伊豆沼の四カ所だけでしたが、平成三年(一九九一)に谷津干潟や琵琶湖など五カ所が追加されました。指定地の拡大がさらに望まれています。

  新利根川河口にある独立行政法人・水資源機構の妙岐の鼻湿原、鳥類観察小屋