もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌

第一話
 スープ皿と丼鉢の違い
第二話
 霞ケ浦は海跡湖
第三話
 壮年期から老年期へ
第四話
 湖底を刻む二本の谷
第五話
 ナウマン象化石が語る
第六話
 湖底からの地下水湧出

2、古代の霞ケ浦

第七話
 住民に身近な陸平遺跡調査
第八話
 周辺に残る古墳群
第九話
 「常陸国風土記」に思う
第十話
 常陸国府の食糧を支える

3、霞ヶ浦の民俗・信仰

4、霞ヶ浦と洪水

5、霞ケ浦の水運

6、霞ケ浦の水生植物

7、霞ケ浦の野鳥

8、霞ケ浦の魚・貝類

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

第一話  スープ皿と丼鉢の違い

 霞ケ浦は、北浦を含めて約二百二十平方キロの湖面積を持ち、日本第二の湖です。第一位は琵琶湖で、霞ケ浦の約三倍の湖面積です。ところが、霞ケ浦の湖岸線は図で見るように複雑で、距離は二百五十キロと琵琶湖の二百三十五キロより長いのです。

 霞ケ浦の流域(五十六本の流入河川の集水域)面積は二千百六十九平方キロと、湖面積 の約十倍で、茨城県総面積の三分の一に当たります。流域には四十五市町村(茨城県四十二、千葉県二、栃木県一)が位置し、約八十五万人が生活して諸産業活動を行っています。一方、琵琶湖の流域は滋賀県全体にわたり、人口は約百七万人です。 また、霞ケ浦の平均水深は約四メートルと浅く、スープ皿にたとえられ、湖容積は約八億立方メートルです。琵琶湖の平均水深は約四十一メートルで深い丼鉢にたとえられ、湖容積は霞ヶ浦の約三十五倍の二百七十五億立方メートルもあります。

 このように、数字(諸元)の上で二つの湖を比べてみると、霞ヶ浦の方は浅く少ない水量に加えて低地にあり、流域人口が多く、古くからの諸産業活動によって森林が失われ、種々の土地利用が進み、窒素やリンが河川を通じて流入し、富栄養化しやすいことがわかります。しかし、平均滞留日数は二百日(琵琶湖は二千日)と短いので、流れがあれば水 質悪化は進みにくいともいえます。

 霞ケ浦の水質は昭和五十七年(一九八二)の富栄養化防止条例の施行以来、横ばい状況 です。来年(平成二年、一九九〇)度は、条例見直しの年ですが、茨城県のシンボルの一つである霞ケ浦の浄化に全県をあげて取り組みたいものです。


 左・琵琶湖(丼鉢)と右・霞ヶ浦(スープ皿)・地図の縮尺は同じではありません