冬の霞ケ浦の風物詩は湖面に翼を休めるたくさんのカモたちでしょう。彼らは漁船や観光船が近づくと群をなして飛び立ち、しばらく上空を舞って船をやりすごすと、また水面に降ります。その様子は壮観で、わずかに残された霞ケ浦の野生を感じさせます。
日本野鳥の会茨城支部の菊池昶史さん(茨大理学部)の資料によると、一九八五年から 一九八九年までの五年間で十五種、総数で年平均約四万羽のカモ類が記録されています。その種構成の変化をみると、霞ケ浦の富栄養化や漁獲量の減少を反映していることがわかります。
汚濁に強い水面採餌ガモ類のマガモ、コガモ、ハシビロガモの割合が増加し、魚介類を食べる潜水ガモのキンクロハジロが激減しています。富栄養化に伴う生態系の単純化と生物種の多様性が逆比例することを示す好例です。
霞ケ浦は日本第二の湖ですが、カモ類の渡来数は湖面積に比べて少ないのです。日本野鳥の会が毎年一月十五日に行う全国調査によれば、宮城県伊豆沼などガンカモ類が保護されている湖沼が渡来数の上位を占めています。
霞ケ浦の鳥獣保護区は、高浜入の恋瀬川 口部、出島村歩崎地先、土浦入のほぼ全面、牛堀地先、それに北浦北部の一部の五カ所 で、湖全体の三分の一に過ぎません。銃猟解禁日の十一月十五日以降はあちこちで銃声が 響き、カモたちはわずかな鳥獣保護区に逃げこみ、翼を寄せ合っています。
12月の土浦港で