霞ケ浦沿岸にはかつてアシ、マコモ、ヒメガマなどの抽水植物帯 が広がり、谷原と呼ばれていまし た。現在はアシ(ヨシ)原と呼んでいます。
アシ原では、その根元に魚が産 卵し、浅瀬で稚魚が成長するため、 漁業生産上大切な場所です。また、オオヨシキリ、ヨシゴイ、コジュリンなどの野鳥の生息域でもあり ます。さらに農家にとっては、屋根葺きの材料、よしずの材料を採る萱場となっていました。アシ原は、このように農業、漁業など人間の生産活動に結びついた場所でした。
その後、この水域は数年でヒシ群落に被われましたが、昭和五十三年にやはり吹き寄せ アオコによって、結実前に枯死し、翌五十四年には全くの開水域になってしまいました。
最近、アシ原の水質浄化機能が注目されてきました。国立環境研が八郷町のアシ原で行った実験では、生活雑排水中の窒素やリンが五割から八割も除去されることがわかりました。季節、流量、汚濁負荷量によって、結果は異なりますが、アシ原の自然浄化能の強さを示しています。
ヨーロッパの湖沼や琵琶湖では、アシ原を人工的に増やす試みがなされています。また、流入河川水をいったん、広いアシ原が発達した內湖に導いて水質を浄化させることも試みられています。
霞ケ浦では、かつてのアシ原は九割以上、コンクリート護岸に変わり、高浜や浮島など一部に残るのみとなりました。土浦入でわずかに残ったアシ原は、沖合いの砂利採取で掘られた大きな穴に沿岸の砂礫が流れこみ、アシの地下茎が浮き上がって枯れ、さらに少なくなっています。霞ケ浦でもアシ原の復活が真剣に考えられなければなりません。
稲敷市、晩秋の妙技の鼻、広大な浮島の湿原。霞ケ浦に残る最大のアシ原。コジュリン、ヨシ ゴイ、チュウヒなど野鳥が多い。近年はアシ原の自然浄化機能と生物相の豊かさが注目されている。