平成元年夏、牛久沼のアヤメ公園でオニバスが消えてしまったことが本紙で報じられま した。このオニバスは、かつて霞ケ浦の高浜入奥部でも大群落が見られたものです。
信州大学・桜井善雄氏の調査では、昭和四十七年(一九七二)には幅百八十メートル、 長さ八百メートルに達する広大なオニバスの群落がありました。ところが、翌四十八年に は、大渇水に加えてアオコが大発生し、吹き寄せられたアオコがオニバスの葉面を被った ためオニバスが枯死し、壊滅状態となりました。
その後、この水域は数年でヒシ群落に被われましたが、昭和五十三年にやはり吹き寄せ アオコによって、結実前に枯死し、翌五十四年には全くの開水域になってしまいました。
このように、アオコの発生は水生植物相に甚大な影響をもたらしています。その過程は 桜井氏によると次のように考えられています。
富栄養化の進行とともに、植物プランクトンが大発生するようになると透明度が低下 し、まず沈水植物の光合成が阻害され生育できなくなります。さらに植物プランクトンが 増え、アオコ(水の華)となって水面を被い、風に吹き寄せられ、浮葉植物の葉面の気孔 を塞ぎ、光合成阻害されて枯死します。最後に、アオコは軟泥状に堆積し腐敗して硫化 水素を発生させ、ヨシ、マコモ、ヒメガマなどの抽水植物の根元を腐らせます。
霞ケ浦では、これまで何度も「究極のアオコ」と呼ばれる大発生が見られ、そのたびに 水生植物が大きなダメージを受けてきました。
2014年6月水質調査のおりの高浜入りで見たアオコ