初夏、風のない穏やかな日に霞ケ浦湖畔を歩くと、船だまりでクルメサヨリの小群が産卵行動をしているのを見ることがあります。クルメサヨリは、サヨリに近縁の汽水魚で、淡水化した霞ケ浦によく適応して生息しています。
霞ヶ浦では、漁師の網に入ることがありますが、商品価値がないので、漁港付近によく捨てられています。
サヨリは西日本の沿海に多く、魚体は大きくて美しく、美味で鮨ダネとして人気があり ます。一方、クルメサヨリは細く小さく、頼りなげで珍重されません。しかし吸い物や酢のものにすると絶品です。
霞ヶ浦では、クルメサヨリは五〜八月に、波が静かで水草が繁茂する場所で産卵します。卵は付着卵で、水草に産みつけられます。孵化した仔魚は、体長一センチメートルくらいになると、下あごが伸び始め、浮遊しているプランクトン類を食べます。成魚は十八センチメートルくらいになり、そのうち下あごは約四センチメートルです。この長い下あごで水面近くを漂っている餌をすくうようにして食べます。しかし、アオコを食べてくれるかは、わかりません。
クルメサヨリは、よく見るとなかなか姿が美しく、出島村立霞ケ浦水族館(現・かすみがうら市水族館)では、ワカサギとともに水槽で飼育されています。しかし水槽が狭いために、下あごがガラスに当たってつぶれてしまっているのは残念です。
話題になることが少ない魚ですが、霞ケ浦の多様な生態系を構成する一員には違いありません。
かすみがうら市水族館。写真を撮った日にはクルメサヨリは無かった。