茨城産の納豆は、小粒で口あたりが良く、水戸納豆の名で全国に知られています。ところで茨城産の納豆はなぜ小粒なのでしょうか。その秘密は、かつて頻発した洪水にあります。
秋に台風が襲来すると、那珂川下流低地、利根川下流低地、霞ケ浦沿岸低地は、たびたび洪水に見舞われました。特に霞ケ浦沿岸では、江戸時代以降の利根川東遷工事以来、利根川の水が逆流するようになり、洪水に苦しめられ、米の収穫は三年に一度と言われたほどでした。そのため、台風前に収穫できるように、農林一号などの早生種が植え付けされ、水郷地帯は早場米の産地でもありました。一方、ダイズは、水田のあぜ(くろ)に植えられ、くろ豆とも呼ばれましたが、やはり洪水前に収穫できる小粒の早生種が植え付けられました。この小粒ダイズは食味が良く、納豆のほか、味噌や醤油に加工され、霞ケ浦や利根川の水運を利用して、東京方面へ出荷されました。特に醤油は「おひたち」「むらさき」(常陸国や紫峰・筑波山にちなんで) がその代名詞になるほど、当地産は有名でした。
現在でも、霞ヶ浦沿岸では、小川町、玉造町、牛堀町などの納豆工場、石岡の味噌工場、土浦の醤油工場などダイズの加工産業が立地しています。原料のダイズは、輸入自由化のため、大部分を安い北米産や中国産に頼っています。また、ダイズ製品の工場からの排水は窒素濃度が高かったのですが、富栄養化防止条例により改善されつつあります。
納豆生産日本一の茨城県で最大手のタカノフーズ(小美玉市)