列島古建築紀行 第2回

  
写真・文 宮本和義

佐藤家住宅 北海道寿都郡寿都町歌棄町有戸  竣工/明治初期(佐藤家口伝では明治3年)

木造二階建 内部は総檜材
 ★道指定文化財

 佐藤家の初代・栄右衛門は建網(たてあみ)の開発を行うなど北海道漁業の振興に大きく寄与した人物である。佐藤家は明治5年(1878)頃に歌棄に居住し、二代栄右衛門の時代に和洋折衷の九間取の主屋と邸内社殿などの建造をした。主屋は間口13間半(24・3m)の長大な外観を海に向けてたつ。奥行は10間。開口部に繊細な竪繁格子が連なり、一階は和風だが二階はペディメント付の上げ下げ窓を連続させ軒先を蛇腹にした洋風デザインである。北海道の和風建築は少なからず洋風が加味されているものが多い。屋根中央部に望楼のような六角形のトップライトを載せている。内部一階には「ジョウイ」と呼ばれる大広間があり上部は吹き抜けである。

この家には漁夫たちの宿泊ゾーンはない。番屋でなく網元の住居で通常の鰊番屋の構成とは異なる。建築年代、規模、意匠や構造等からみて、現存の漁場建築中ではこの建物に匹敵するものがない代表的な遺構である。

◆写真 上/13間半の長大なファサード

    中/山側の座敷、書院や襖に往時の栄華が香る

      上部の欄間窓は洋風デザイン

    下/大広間の吹抜けに梁はなく壁構成である

2019-08-16

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漁場建築佐藤家  北海道指定文化財

旧歌棄佐藤家漁場 国指定史跡天然記念物